落ちてきた天使

皐月は自分の腰に回った私の手を解くと、体の向きを変えた。

そして、ニヤリと口の端を上げると私の顎をクイッと上げて、わざと艶めかしく言った。



「今は流石に外だし我慢してやるけど、家に帰ったら容赦なく抱くから」

「だ、抱くって…?」

「高校生じゃないんだろ?今日からもう一生離さないから覚悟しとけよ?」

「っっ!!!」



火がついたように顔を一気に赤くして、声にならない叫び声をあげた私。

そんな私を見て、皐月はくっくと肩を揺らした。







パンパンパーンッ!!!


天下一のドアを開くなり、突然クラッカーの音が鳴り響いて、私は驚きのあまり石のように固まった。



「彩ちゃん!お帰り!」



女将さんとおやっさんが、いつもの元気な笑顔で迎えてくれる。

そして、私よりも先に大学生になった洋平も「遅いぞ」と笑ってくれた。



「会えたみたいで良かったわ」

「女将さんが皐月を呼んでくれたの?」



あの芝生公園は皐月との思い出の場所だからといって、平日の午後でしかもあんな短時間の間に居合わせるのは偶然過ぎると思ってた。



「違うよ。女将さんもおやっさんも、俺が何度聞いても教えてくれなかった」

「じゃあ本当に本当の偶然?」



皐月は人差し指で頬を掻くと続けた。



「いや……晃から彩を見たって連絡貰ったんだ」

「あの赤い三角屋根のパン屋の中垣晃さん?」

「ああ。お前、店の近く通っただろ?」



そういえば、新しいケーキ屋はあのパン屋さんの近くだ。



「連絡貰ってすぐ探しに出たんだよ。たまたま今日は家で仕事してたから」

「そうだったんだ」



そうか、中垣さんに見られてたんだ。

それで皐月は身一つで走って探しに来てくれたんだね。

汗をかいて、息を切らして、私のために。