落ちてきた天使

キスされるって思った。
ううん、私がしたかった。

だけど、皐月は唇を噛むと私から距離を取って、私の頭に手を置いた。



「行くか。皆が待ってる」



皐月はそのままスッと立ち上がって、木の根元に置いてあった私の荷物を持つと歩き始める。


その背中を、少し残念に思いながら見つめた。


私……何かいけなかったかな。
気に障るようなこととかしちゃったかもしれない。


熱くなった胸が疼く。

触りたい。皐月に触って欲しい……


気が付いたら、私は走り出していて。
皐月の大きな背中に抱き着いた。



「行かないで……もう少し二人でいたい」



顔から火が出そうなぐらい恥ずかしい。

けど、今はそれでも皐月に触れて欲しかった。



「彩、嬉しいけど今は駄目だ」

「なんで?」

「俺だって彩に触りたい。今すぐにでも俺のものにしたい。だけど、今お前に触れたら、俺自分を止める自信がねぇよ」



皐月の上擦った声に、呼吸が出来ないぐらいドキドキしてる。

それだけじゃない。
皐月の体に回した手のひらに、私よりも速い鼓動を感じる。


私だけじゃなかった。
皐月も私と同じ気持ちでいてくれたことが嬉しい。



「止めなくていい……私、もう高校生じゃないよ?大学も受かったし。だから、」

「馬鹿。そんなこと男の前で簡単に言うな」

「皐月だから言ってるんだよ」

「当たり前だろ?他の男に言うのは言語道断」

「もう!皐月はすぐにそうやって言うんだから。全然変わってない」

「お前も、俺に突っかかって来るとことか全然変わってねぇな」



どんどん会話のテンポが早くなっていく度に色気やムードが薄れていく。

でも、このどうでも良いような言い合いが以前から心地良くて好きだった。