落ちてきた天使

思いっきり泣いた。

一年5ヶ月分、沢山皐月に触れて甘えた。


やっぱり私の居場所はここ。
皐月の腕の中だけだって、改めて思った。



夕方五時を報せる鐘が鳴る。

空はすっかり燃えるような濃い茜色に染まり、二月らしい冷たい風が頬を撫でた。

でも、寒さは感じない。
皐月に包まれて、今は体も心もぽかぽかに暖かい。



「起きれるか?」

「うん……」



皐月はずっと寝転がったまま抱きつく私をゆっくりと起こしてくれた。

でも、恥ずかしくて、皐月に顔を見られる前に両手で覆い隠した。



「何で隠すんだよ」

「だって、泣きすぎたから恥ずかしいんだもん……鼻水だって凄いし、マスカラ落ちてパンダになってるだろうし。こんな顔、見られたくない」



久々に会うのに、こんなボロボロで不細工な顔見せたくない。

可愛いって思われたいもん。

こんなことになるなら、ウォータープルーフのもっと良いマスカラを買っておけば良かった。



「俺は彩の顔見たいんだけど」

「でも」

「見せて」



ずるい……
そんな甘えるような声で言われたら、嫌だって言えないじゃん。


ゆっくりと手を解いていく。
真っ暗だった視界に徐々に光が差し込み、皐月の輪郭が見え始めた時、皐月が私の両手首を掴んだ。

「っっ!」と、声にならない悲鳴を上げたと同時に、ぐいっと引き寄せられた。

鼻先が触れるぐらいの距離にある皐月の端正な顔。

瞬きもせずに真摯な眼差しで私を見つめてくる。


熱い……
皐月の吐息と視線が、私の胸を熱くさせた。


もうどうなってもいい。
皐月と一緒なら地獄にだって落ちれる。

それぐらい好き。