落ちてきた天使

『それに、私が無理……皐月にさようならって言われるなんて……耐えられるわけっ、ないじゃん……!』



今、こうして話してるだけで辛くて泣けてくるのに、面と向かって言われたら私はもう生きていけない。


今ならまだ間に合う。

皐月との思い出に、別れの言葉なんて入れたくない。



『ごめ……洋平、ごめん……』

『ホント…二人とも馬鹿じゃん……優し過ぎんだよ!自分の幸せだけ考えとけよっ…施設の再建なんてここじゃなくたって出来るだろう……いくらだって方法はあるのに』



道端で泣き合った。
洋平の涙は温かくて、私の心に沁みた。

離れても、洋平のこの涙を、私は忘れない。







『明日の朝、本当に行くんだな』



あの後、天下一のおやっさんと女将さんに全て話した。

二人のご好意で、次のアパートの契約とか必要な時に保護者として協力してくれることにまでなった。

私はまた大きな愛に改めて気付いて、しばらく涙が止まらなかった。


本当は今日すぐにでも出て行こうと思ってたけど、天下一の二人と離れるのが寂しくて最後にバイトして、洋平にマンションに送ってもらった。



『うん、始発で行く』

『そっか。行くとこ決まったら、』

『ちゃんと連絡するから』



何度このやり取りをしただろう。
その度にこうやって、洋平の言葉を遮って言う。


天下一のおやっさんと女将さん、それから洋平の三人には次の住まいが決まり次第連絡すると約束した。

もちろん、皐月や施設長には絶対に教えないという条件付きだけど。



『俺んとこ来ればいいのに』

『それじゃ意味がないじゃない。すぐに見つかっちゃーー、』



言い終える前に、洋平の腕の中に閉じ込められてた。

皐月とは違う男の人の香り。


突然のことに言葉を失った、その時。



『彩……?』



愛してやまない皐月の声が聞こえた。