落ちてきた天使

『彩…大丈夫か?』



ずっと黙っていた洋平が、気まずそうに言った。


大丈夫かと聞かれたら、大丈夫じゃない。
今皐月が置かれてる状況を考えると、胸が痛くて苦しくなる。


皐月は私を助けてくれた。
不幸の星から連れ出してくれた。

皐月がいたから、私は今こうして笑っていられる。


次は私の番だ。
世界で一番大切な人を守りたい。

そのために、私は私が出来ることをするって決めたの。



『洋平も今のこと絶対に言わないでね』

『彩、お前まさか……いなくなったりしないよな?』



洋平が私の手首を掴んで足を止めた。

洋平まで佳奈恵さんと同じような難しい顔で私を見てくる。

私は何も答えず、笑い返した。



『馬鹿っ!変なこと考えんなよ』

『もう決めたの』



私は、この街から出て行く。

皐月とお別れする。


私がいなくなったからって答えが出るわけじゃないけど、少なくとも私をどうにかさせることだって出来るっていう脅しの心配はなくなるし。


そもそも、私がいるからいけないんだ。
私がいるところには、絶対に不幸が舞い降りる。

施設の火事もそうだ。
そして、今皐月を不幸にさせてる。


やっぱり私は、二度と大切な人を作ったらいけなかった。



『洋平。私ね、皐月に沢山沢山沢山!色んな物を貰った。だから、今度は私が恩返しをする番』

『そんな恩返しっておかしいだろ⁈』

『それにね、わかっちゃったんだ。皐月の気持ち』

『え?』

『皐月は優しいから、きっと自分を犠牲にする。施設の再建も私の事も守ろうとしてくれる』

『結婚を選ぶってことか?』



コクンと小さく頷く。

だから皐月は最近おかしかった。
どこか遠いところに行くか、なんて言ったり無断外泊をしたり。

優し過ぎる皐月には酷な選択だったよね……



『だから私は、自分から消えるの。皐月にこれ以上、辛い思いさせたくない』



私に別れ話をしなきゃいけない。
それもまた、皐月を苦しめてる。

ただでさえ自分を犠牲にしようとしてる皐月を、もっと苦しめるなんて出来っこない。