落ちてきた天使

『専務は皐月を解雇すると言い出したの』

『……三橋商事とのツテがなくなったから?』

『施設の再建を出来ないようにすることだって出来るって言い始めた。それと、彩ちゃんのことも』

『え……私?』

『彩ちゃんをまた一人にすることなんて容易いことだって……お母さんが』

『っ、酷い……そんなの……ただの脅しじゃない』



だから皐月はあんなこと言ったんだ。


“このまま二人でどこか遠い所に行こうか”


あの時、皐月はどんな気持ちだったのか。
考えただけで辛い。


皐月の初めての弱音だった。
それぐらい追い込まれてるのに……


私はそれに気付いてあげられなかった。

こんなに近くにいるのに。
こんなに守ってもらってるのに。
こんなに愛をもらってるのに。


私は皐月のために、何が出来る?



『私のせいよ…私がこんな話に乗ったから。本当にごめんなさい……』



佳奈恵さんは頭を深く下げた。


怒る気になんてならなかった。

佳奈恵さんはただ皐月を好きだっただけ。
それが少し変な方に向かってしまったけど、自分で気付いて正そうとした。

そんな佳奈恵さんを私が怒れるわけがない。



『佳奈恵さん、皐月をよろしくお願いします』

『え……彩ちゃん?』

『ハハ、私がお願いするのもおかしな話ですよね』



でも、この後のことは佳奈恵さんにお願いするしかないから……



『それと、この話を私に教えてくれたこと、皐月には内緒にして下さい。皐月はきっと、私に知られたくないから自分から話さなかったんだと思うので』

『それはいいけど……』

『それじゃ、私急ぐのでこれで失礼します』



一礼して、ずっと隣りにいてくれた洋平と歩き出す。


佳奈恵さんは、まだ私の意図には気付いていないようだけど様子がおかしいのは感じているのか、少し難しい顔をしていた。