落ちてきた天使

「おやっさん⁉︎女将さんは⁈」

【大丈夫だ】

「でも、大きな音がっ」

【ああ、喜び過ぎて声にならないぐらい泣いてるよ】

「え……?え?」



私の焦りに反して、おやっさんの声は嬉しそうだ。ハッハッハと笑い声も聞こえる。

あまりに激しい温度差に戸惑いを隠せない。



【おめでとう、彩ちゃん。よく頑張ったな】

「おやっさん……」



自分の受験番号が掲示板に載ってるのを見た時、凄く嬉しかった。

でも、何か漠然としてて、そこまでの感動もなかった。


だけど、おやっさんにおめでとうって言われて、鼻の奥がツンッとした。


誰かに喜んでもらえること。
誰かと喜び合えること。

合格したことも嬉しいけど、そっちの方がもっともっともっと嬉しかった。



【彩、ちゃんっ!】

「女将さん……」

【良かった…本当に良かったね】

「ゔん……」



涙がボロボロと溢れた。
多分女将さんも沢山の涙を流してくれてる。


赤の他人のこんな私のために、この人達は沢山の愛をくれる。



【一人で寂しかったね……よく乗り越えたね】

「っっ、ぅん……」



この街に来て1年5ヶ月。

勝手に足が皆がいる街に行かないように遠くに引っ越して、寂しさを忘れるためにひたすら勉強して。


短いようで長いような、長いようで短いような、そんな日々だった。



【そろそろ戻ってきたら?大学、こっちからでも通えるでしょう?】



女将さんの言う通り、大学はここと天下一があるあの街のちょうど真ん中にある。

電車で一時間、十分通える範囲だ。


だけど……



「もう戻れません……会いたくないんです」



皐月とは、もう一生会いたくない。