落ちてきた天使

プルルル……と、ポケットに入れたスマホが鳴った。


ドキッと心臓が跳ねる。
番号を変えたんだから電話なんて来るわけがないのに、期待してしまう。

本当に馬鹿な私。



スマホの画面に表示されているのは、案の定皐月じゃなかった。

“やっぱり違った”と寂しい気持ちになりながらも、表示されてる相手に口元が緩んで通話ボタンを押す。



「もしもし」

【もしもし、彩ちゃん?】



電話の相手は天下一の女将さんだった。



「女将さん……」



声を聞いた瞬間、心がほっこりする。

今の私の唯一の心の拠り所で、天下一の二人がいなかったら私は今頃のたれ死んでたはずだ。



【気になって電話しちゃったわ。どうだった?大学、合格した?】



電話口の女将さんは緊張しているせいか、少し早口になっていた。


そう、今日は大学の合格発表日。
さっき正に、発表を見てきたところだ。



「無事、合格しました!」

【………】

「女将さん?」



返答がなく不思議に思って聞き返すと、ゴンッと受話器を落としたような物音がした。



「え?女将さん?大丈夫ですか?」



背中に冷や汗が流れた。

まさか、また体調が悪くなったんじゃ……


バイトを始めたばかりの頃、女将さんは何かの病気なのかもって思ったことがあった。

洋平に聞きそびれてからというもの、気になってはいたけどなかなか聞けてなくて。

去年の年末、女将さんは倒れた。
おやっさんに連絡をもらって、病院に駆けつけた時に初めて病名を聞いた。

今は自宅で療養中だ。
年末に倒れた後からは目立った体調の悪さはないって聞いてたけど、近くにいられない分、不安になる。

嫌な予感が頭を掠めて、指先が冷たくなり始めた時。



【ーーー、彩ちゃんか?】



電話口からおやっさんの声が聞こえた。