でも、もしそうなら私も一緒に考えたい。
それが例え、私に直接関係ない話でも関係ある話でも、皐月の悩みは私の悩みだから。



「今日帰ったら聞いてみようかな」



そう覚悟を決めて家に帰ったのに、その日皐月はとうとう無断外泊をした。


私は眠れない夜を過ごし、目の下に隈を作って学校に行った。

授業なんて集中出来るわけがない。
ただでさえ、進学を迷ってた私は他の人より勉強が遅れてる。

一分一秒だって惜しい。

なのに、シャーペンを握った手は全く動かなかった。



「もう授業終わったぞ」



いつの間にか全ての授業が終わっているのに気付いたのは、洋平が帰り支度を済ませた後に声を掛けてくれた時だった。

ハッと我に返ってキョロキョロ周りを見渡す。
半数のクラスメイトがもう教室にはいなくて、時計は放課後の時間を指していた。



「ヤバ…急がないとバイトに遅れる」

「彩、今日は休め」

「え?何で?」

「何でじゃない。そんな疲れ切ってて何が出来る?昨日寝てないんじゃないか?」

「そんなこと、」



“そんなことない”と、否定しようとしたけど、洋平には全て見透かされてる気がして最後まで言えなかった。



「送るから支度して」

「大丈夫。洋平がバイト遅れちゃうよ」

「いいから。女将さんには彩を休ませるってことも含めて連絡しといたから」



流石洋平。抜かりない。
これはノーは受け入れない態勢みたいだ。

でも、確かに足元がふらふらしてる。
お言葉に甘えて、今日は洋平の言う通りにしよう。


ずっと開きっぱなしだった教科書を仕舞って、急いで鞄に入れる。

先を歩く洋平の存在を心強く思いながらも、私はまた昨日帰って来なかった皐月のことが気になってため息を漏らした。