落ちてきた天使

皐月の喉仏が上下した。

ゆっくりと近付く距離。
あと5センチ、3センチ……1センチ……



ーーーーピンポーン!



唇が触れ合う寸前に、インターホンが鳴り響いた。


二人して閉じていた瞼を開き、忌まわしい音にピタリと動きを止める。

少しの沈黙と、気まずい空気が流れた。



「誰か来たね……出ないの?」

「……放っとく」

「でも」

「今はこっちの方が大事」



そう言って、皐月は間髪入れずに私の唇を無理矢理奪った。



「んっ……」



自分のものとは思えないぐらいの甘ったるい声が漏れた。


どんどん深くなるキス。
口の隙間から皐月が侵入してきて、歯列をなぞられ、舌を絡め取られ。
嫌じゃない。むしろ嬉しいのに、犯されてる気分になる。

激しい皐月に膝がガクッと折れると、皐月は手慣れた様子で私をソファに倒した。



「あ……」

「嫌?」



私の顔の横に手をついて、熱を帯びた瞳で私を見下ろしてくる皐月。

艶やかな空気を纏い少し乱れた吐息に、私の思考は完全に麻痺した。



「嫌じゃない……して?」



そう言って、自ら強請るように皐月の首に腕を回した。


怖いとか、初めてだからどうしようとか、そんな不安は今はなかった。

ただ皐月に触れたい。触れて欲しい。
皐月を独占したい。

その想いが、私を大胆にさせる。


「っっ、」と、息を飲む皐月。



その時、二回目のインターホンの後、ドアをどんどんどんどんっと激しく叩く音が部屋に響いた。