皐月はすぐに何の話かわかったようで、すぐに口を閉ざし悲しげに眉を寄せた。



「寂しくて不安で仕方ないと思う。だから、少しでも一緒にいたい。無理してでも何かしてあげたいって思うの」



受け入れ先が決まり手続きが終わった子から、順次引っ越して行く。

泣きながら迎えの車に乗り、見えなくなるまでリアガラスにへばりついて手を振る子供達。

本当に胸が引き裂かれる思いだ。

その度に自分は無力だと痛感する。



無言の時間が続いた。
時計の音がやけに響く。

それを破ったのは皐月で、「そうだな」とふぅと息を吐きながら言った。



「あいつら、優しいお姉ちゃんがいて幸せ者だな」

「皐月…」

「だけど、お前が身体壊したら元も子もないぞ。無理すんな。辛くなったらちゃんと言えよ」



ぽんぽんっと頭を撫でる皐月。
その笑みに胸が疼いた。

最近、皐月とゆっくり出来てないからかな。
今、無性に皐月に触りたい……



「皐月…あのね」

「ん?」



急速に胸が高鳴る。
恥ずかしくて皐月の顔を見れない。
この緊張感に耐えきれず、俯いてスカートをキュッと握った。



「キス……したい」

「……えっ」



皐月にしては間の抜けた声。
身体が強張ったのを感じた。

驚いてるんだ、きっと。
まさか私がこんなことを言うなんて、思ってもなかったんだろう。


上目遣いに皐月を見つめる。

多分、顔は真っ赤だ。
でも、こういうことって女から言ってもいいと思うから……



「キスして……皐月」



「あや」と私の名前を世界で一番愛おしい音が奏でる。

それは酷く掠れていたけど、私の欲情の箍を外すには十分過ぎた。