施設全体を包んだ炎は数時間後に鎮火された。

焼け残ったのは鉄筋の骨組だけで、夕方まで確かにあった施設は今や面影もなかった。



「そんな暗い顔すんな。皆無事だった。それでいいじゃねぇか」

「でも……」



ここに入所してた子供達はどうなるんだろう。

住むところがなくなってしまった。
他の施設に移るにしても、すぐに行き先が決まるものなのか。
ここにいる皆が一緒にこれからも暮らしていくのは無理なのか。

これからのことを考えると胸が痛む。



「生きてさえすれば何でも出来る。俺らはあいつらのために出来ることをすればいい」

「私に出来ることなんてあるのかな……」

「あるだろ。あいつらにとって一番大切なことだ」

「大切?」



俯き気味だった顔を上げた。

いつの間にか野次馬は消えていた。
消防や警察は片付けを始め、職員や子供達は念のために診察を受けることになり病院に向かった。


さっきまでの騒々しさから一転、静けさを取り戻しつつある現場。

ササーッと風が吹き、少し焦げ臭さが鼻を掠めた時。



「笑ってればいい。それだけで十分だ」



真っ黒に汚れた顔で、ニカッと白い歯を見せて笑う皐月。


やっぱり凄い。
皐月の言葉には信頼感がある。
皐月の笑顔には安心感がある。


さっきまで暗かった心がスーッと晴れ、それでいいんだって軽くなった。


まだ皐月が火の中にいる時、私が皆の光になるって思った。

それは火が鎮火したからって終わりじゃない。
子供達の戦いはこれからも続く。

施設がなくなってしまった今、どうなるのかまだわからないけど。

例え、バラバラになってしまったとしても、私はここで光り続けよう。

誰かが迷った時、道しるべになれるように。

おかえりの場所になれるように。