落ちてきた天使

救護テントに入って数分。
バキバキバキっと何かが崩れる大きな音がしてすぐにその場に立ち上がると、視界に入った光景に一瞬心臓が止まった。



「っっ、なに、これ……」



向かって右側にあったはずの食堂。

パーティーなどの催し物が開けるようにちょっとしたステージがあり、施設では一番広い部屋で、いつも皆の笑顔と笑い声で溢れた場所。


その食堂がーーーー、姿を消した。






「う、そ……だろ…」



洋平や職員は、その場に力なく膝をついた。


終わった……
ここまでだ……


皆の心の声が聞こえる気がする。
ううん……皆だけじゃない。

一瞬、私も……


目の前に広がる無惨な光景に、声を発するどころか身体を動かすことも出来ない。


ただただ変わり果てた施設を茫然と見つめていた。




「中に残された子供達はまだか⁈」



現場の指揮を取っていたレスキュー隊隊長が焦りが混じった声で叫ぶ。



「行方不明者三名、未だ発見に至っておりません!」



施設長、ななちゃん……皐月っ!!


神様。
どうか三人をお助け下さい……

私ならどうなっても構わない。
だから、だからっ……!



「状況はどうなってる⁈」

「一階の調理室、図書室、事務室は火が強く捜索不可能と報告有り!只今二階と三階を捜索中です!」

「よし、裏口の火が弱まってきてる!出動だ!私も行く!」



隊長の言葉に、ドキンッと鼓動が跳ねた。


火が弱まってきてる……
そこから更にレスキュー隊が入れる。

ってことは、少しずつだけど良い方向に向かってるっていうことだ。


まだ終わってない。
ここまでじゃない。


不安と恐怖で押し潰されそうな心を奮い立たせるように、思いっきり空気を吸い込む。

そして、それを一気に吐き出すと、しっかりと目を開いた。



「洋平。私、行くね」

「彩…?」



皐月が付けてくれた左薬指のキスマークに視線を落とす。


大丈夫……
皐月は生きてる。

だって、俺は必ずここに戻ってくるって言ったから。


皐月は約束を破ったりはしない。



そうだよね?皐月ーーーー。