『ねぇお兄ちゃん、神様っているのかな?』



まだ幼い私が、あの高台の芝生公園の木の上で星空を眺めながら言った。

頬には涙の跡。
鼻をズズッと啜って、涙で濡れた服が冷たくて。



『神様?』

『うん。神様はどんな願いも一つだけ叶えてくれるって絵本で読んだの』



あの頃の私はまだ何かに縋りたくて必死だった。

そんな時に施設で読んだ絵本が幼心に響いて、誰かに神様はいるよって言ってもらえたら、少しは気持ちが楽になるような気がしたんだ。



『そうだな……俺はいるって信じてるよ』

『本当?』

『本当だ。神様は信じる者に力を与えてくれる。俺は信じたから、一つだけ願いを叶えてもらった』

『どんなお願いをしたの?』

『家族が欲しいってお願いしたんだよ。そしたら弟や妹が出来た。毎日賑やかで、楽しくて、寂しいと思う暇もない。俺にとって、彩や他の皆は家族同然だ』

『そっか。お兄ちゃんと私はもう家族なんだね』



そう言って、私がニコッと笑う。
大きな手が頭にぽんっと降りて、彼も満面の笑みを浮かべたーーーー。