落ちてきた天使

そっか…皐月には何もかもお見通しってわけか。

大丈夫だって言ったのに、私が内心怖がってるのに気付いてあんなこと言ったんだね。


皐月の思惑通り。
あんなことを恥ずかしげもなく言われて、頭の中が皐月でいっぱいにならないわけがない。


なんか悔しいな……
ならせめて、皐月の頭の中も私でいっぱいにしたい。



「……そんなこと言わなくたって、私の頭の中はいつも皐月でいっぱいだよ。皐月も意地悪なこととか何も考えられないぐらい私でいっぱいになればいいのに」



口を尖らせてぶつくさと言う。

皐月が息を飲んで、「彩…」と掠れた声で言った時。



「おい!あの火事、養護施設だってよ!まだ何人か中に取り残されてるって!」



慌てて家から出てきた老夫婦が西の方角から立ち上がる煙を指差して言った。


耳を疑った。
突然舞い込んできた話に、二人してビクッと全身を強張らせた。


今、養護施設がって言った……?
取り残されてる人がいるって…そう聞こえた……



「すみませんっ!それ本当ですか⁉︎取り残されてる人がいるって」

「ああ、子供数名と、助けに戻った施設長らしい。今ニュースでやってたよ」



皐月が住人に話し掛けると、住人が切羽詰まった様子で答えた。



嘘でしょ……
誰か、嘘って言って……


さっきの消防車と救急車は施設に向かってたんだ。

あの数からしてかなり酷い火事だなって皐月も言ってた。立ち上がる煙もそれを物語ってる。


音が遠退き、手足が小刻みに震え、体温が指先からサーッと引いていく。

呼吸も動悸も乱れ、視界までもが歪み出した。



「わ、私だ……私の、せいだ……」



私がこの街に戻って来たから。
私が施設長や施設の子供達と関わりを持ったりしたから。

……皆を大切だと、思ってしまったから。


私はまた同じ事を繰り返した。

不幸の星の下に生まれた私の運命が、自分の気持ちの持ちようで幸か不幸か決まるなんてことあるわけがないのに。


私が幸せになんてなれるはずがなかった。