「俺、本当はお前らが話してる時に施設に着いたんだけど、洋平が俺のこと尊敬するとか何とか話してたから出るに出られなくなって隠れたんだ」



そういえば、あの時洋平がめちゃくちゃ皐月のこと褒めてたっけ。

あれを本人が聞いたら確かに照れる。
隠れたくなる気持ちがよくわかるかも。



「悪いとは思ったんだけど、お前らの話聞いてた。というか、聞こえる所にたまたま隠れたっつーか………っておい!そんな笑うな!」



皐月が照れて隠れる姿を想像するとおかしくて、皐月が話してる途中にも関わらず、ついクスクス笑ってしまった。

「ごめん」と言いながらも、笑いが込み上げてくる。止まれと思えば思うほどに。



「だって、なんか皐月が可愛いんだもん」

「お前に可愛いって言われても嬉しくも何ともねぇし」



あ、今度は不貞腐れた。
頬を赤らめて視線を外す皐月が堪らなくツボで、またもや笑ってしまったのは言うまでもない。



「とにかく!ムカついたんだよ」



皐月は以前から洋平のことを気にしてる所がある。

私にとって洋平は兄弟みたいなもので、そこまで皐月が意識するような関係じゃないのに。



「バザーの前日準備の時、俺には進路調査表隠しただろ」

「見えてたの⁉︎」

「馬鹿。丸見えだ」



咄嗟に隠したつもりだったけど、まさか皐月に見られてたとは……



「彩は俺に相談する前に自分で考えたいんだと思ってた。だから俺からは何も話さないで話してくれるのを待とうって思ったんだ。なのに、洋平に相談してたから」

「あ……」



皐月の言いたい事がようやくわかった。
私が自分にじゃなくて違う人に先に相談したから嫌な気持ちにさせちゃったんだ。

もし私も同じ立場だったら、大事なことは誰よりも先に私に言って欲しい。

ましてやそんな現場を見たら、私だって多分嫉妬すると思う。



「勝手に嫉妬して、意地張って三橋を名前で呼んだこともないのにわざと呼んだ。知らないって言ったのは、三橋に“矢嶋彩”がお前だって知られたくなかったから。あいつ、何するかわかんないし……でも言い方悪かったよな。ホントごめん」

「ううんっ!元はと言えば私が」



ごめん、と謝ろうとすると皐月が私の唇に指を当て、それ以上言えないように口を塞いだ。