咲ちゃんのお父さんはお母さんの背中を撫でて宥めながら、私にありがとうって悲しく微笑んだ。



『よく咲から君の話を聞いていた。君のお陰で学校行くのが楽しみだって』



そうやって言ってくれたけど、私は咲ちゃんを守れなかった。


私だって…ううん、私の方が咲ちゃんに救われたのに。

毎日が楽しくて、学校に行くのが楽しみで。

それなのにっ……



「私が側にいたから……さゆりちゃんも咲ちゃんも、私のせいで」

「ーーもういい」



ずっと黙って話を聞いてくれていた皐月が、私の肩を掴んで身体を自分の方に向かせると、沈痛な声で言う。


その瞳は涙で潤み、止めろ、と言うように首を横に振った。


だけど、止まらない。
噴き出した感情は、火山が噴火した時のように止めることは出来ない。



「私が求めたら…失うの。全部だよ。求めて、無くならなかったものなんて私にはないっ……」

「彩っ」

「パパ、ママ、弟、おばあちゃん、さゆりちゃん、咲ちゃん!その次は誰だと思う⁈血の繋がってない私をここまで大切に大切に育ててくれた家族よ!お父さんとお母さんっ!優しくて、私を本当の娘のように愛してくれた二人をよ……⁈私は自分の運命に巻き込んでしまった。火事でっ……」



息が苦しいっ……
胸をギュッと抑えて呼吸を整えようとしても、収まるどころか荒くなる一方で。


熱い。
焼け焦げた臭いと煙が私の体から力を奪っていく……


目の前に広がる火の海。

ミシミシミシッ!っと音を立てて崩れていく家の柱。


そして、お父さんとお母さんの最後に見た優しい笑顔。



「お父さ……お母、さん……っ」



会いたいよ……
もう一度、会いたい。


血の繋がりはなくても、私は二人が大好きだった。