ここは児童養護施設だ。


児童養護施設は、経済的理由、虐待など何らかの事情で家庭での生活が困難な子供達が利用する施設のことで、特別な理由がない限り18歳まで利用出来る。



私は5歳の時、両親と当時2歳になる弟が車の事故で亡くなった。


突然一人になった私は町内に住む祖父母に引き取られるも、すぐに祖父が認知症で介護施設に入所し、祖母が病死。


他に身寄りがなかった私は、7歳でこの児童施設に入った。


幸いにも8歳で子供がいない矢嶋夫婦に引き取られ、私は【河合彩】から【矢嶋彩】になった。
矢嶋の子になった時、この町を離れることになったが、施設長は私がこの町を出てからも何かと気にかけてくれた。


今回も今まで住んでいた家が火事にあって行く所がなくなった私に、施設長は7歳の時と同じように「うちに来なさい」と声を掛けてくれたのだ。



「昨日、一人入所を受け入れたから空きがなくなってしまったのよ」



「ごめんなさいね」と眉を下げる施設長に、私は頭を振った。



「施設長。私なら大丈夫ですよ。実はここにいた時に仲良かった先輩とSNSで連絡取り合ってるんです。その先輩、大学生で今一人暮らししてるんで頼んで泊めてもらいますから」