「彩?」



何も言わず遠い目をする私の顔を覗き込むように、皐月が優しく名前を呼ぶ。


それだけでも嬉しい。幸せだと思うのに。


この皐月に対する気持ちを、私はこれからもずっと無視し続ける事が出来るのかな……



「私、絶対とか永遠とか…そういう不確かな言葉は信じないって決めてたの」



私の言葉に、皐月は目を見開く。
だけど、すぐにきりっと顔を引き締めると、私を真摯な目で見つめた。



「なら、俺を信じろ」

「え?」

「そんなたった数文字の言葉なんて信じなくていいから、俺を信じろよ」



皐月を信じる……?



「俺がお前を幸せにしてやるから、お前は黙って俺について来い」



皐月の凛とした声が胸に直接響く。


私は一体を迷ってたんだろう。


皐月は初めっからブレることなく私を受け入れてくれてた。


こんな私でも、皐月は真正面から受け止めてくれてたのに。



「私といると…不幸になるかもしれないよ……?」



声が震える。


私の不幸な人生に皐月を巻き込むのは怖いのに、それよりも皐月と一緒にいたいと思ってしまった。



「バーカ。その逆」

「逆?」

「お前が俺の幸せそのものなんだよ」



そう自信に満ち溢れた顔で言うと、皐月は私に手を差し出した。


大きくてゴツゴツした手。



信じよう、この手を。


ついて行こう、この手に。


しっかりと強く、離れないように。
私は自分の手を重ねた。