「寂しい思いさせてごめんな」

「皐月……」



急に真面目な顔をして言う皐月に、胸がキュッと詰まる。



擦れた心に染み渡るような優しい声と、可愛げない私をまんま受け止めてくれてるような逞しくて力強い瞳に、胸だけじゃなく細胞までもが震えた。



「ううん、私こそさっきはごめん」

「もう一人にしない、絶対」



皐月の放った“絶対”に、信じたい気持ちと信じたくない気持ちで瞳が大きく揺れる。



私の人生に“絶対”なんて存在しなかった。


“絶対迎えに来てね!”

“いつまでも親友だよ!絶対!”

“家族三人で、絶対幸せになろうな”


これまで絶対と言って交わした約束は、ことごとく裏切られてきたから。


絶対とか。
永遠とか。
一生とか。


そういう言葉は私には無縁。


そうありたいと願ってしまったら、不幸が始まる鐘が鳴ってしまう。


でも、この間皐月にプロポーズされた時。


『安心しろ。お前は絶対ノーなんて言わねぇから』

『決まってんだろ?今に彩の心ごと俺の物になる予定だから』


私は一瞬でも皐月の言葉なら信じてもいいかなって思ってしまった。


今だって……
ギリギリの所で踏み止まってる。


皐月の手を取りそうになってる私がいる。