「顔…真っ赤、だよ…?」



皐月は顔どころか耳や首までも赤く染めて、視線を泳がせた。



「あ?別に赤くねぇし。あれじゃん、外灯のせいとか」

「あれ白熱灯だよ」

「は?知らねぇよ、そんなもんっ」



あの意地悪で強引で俺様で自分勝手な皐月が激しく狼狽えてる……


さっきよりも顔真っ赤にして、言ってる事も皐月らしくないし。


何これ、可愛いんですけどっ!



「ぷっ、あははは!」



私は思わず、吹き出して笑ってしまった。


こんな風に笑ったら絶対怒る。
だけど、笑わずにはいられなかった。



「くそっ、笑い過ぎだ」

「だって、」

「あー!もうわかったから行くぞ」



皐月は手をパッと離すと、髪を無造作に掻きむしって先に歩き出す。


ちょっと待ってよ!と、皐月の後を追って隣りに並ぶと、空いてる皐月の手を今度は私からギュッと握った。


その瞬間、カキッと固まって私に勢い良く視線を向ける皐月をちらりと見上げる。



「……迷子にならないように手繋ぐんでしょ?」



私にしては大胆なことをしたと思う。


まさか自分から手を繋ぎに行く日が来るなんて、皐月と暮らすようになったあの頃の自分は想像もしてなかった。



皐月はぽかんと口を開けたまま動きを止める。


白熱灯に照らされた皐月の顔はより一層赤くなって、いつもの威厳はなかった。



「ガキのくせに生意気。あとで覚えとけよ」

「はいは〜い。覚えておきますよ」

「おい、マジで後悔するぞ」

「そんな顔で脅しても怖くないよ?」

「あ?そんな顔ってどんな顔だよ」



いつもと立場が逆転した私達は、他愛ない言い合いをしながらマンションまでの道のりを歩いた。


その手はずっと繋がれたまま。