笑う門には福来たる!!

誠十郎が嫁に行った夜



「本当にご無理を聞いて頂いて、感謝しております
ありがとうございました」

「君菊の頼みですからね
私としては、本当に嫁に来て欲しいところだが、家族とすごすのが何よりの薬だ
気をつけてお帰り」

「はい
ありがとうございました」



夜の闇に紛れ、誠十郎が誰にもみつからないように、中垣の家に戻った


長くなっていた髪をばっさりと切り

高く一つに結い


紺色着物に鼠色の袴


「ただいま戻りました」

「おかえり、誠十郎」

「おかえり……綺麗だったわよ」

「ありがとうございます
すみません……ご迷惑をお掛けします」

「馬鹿だな、迷惑なものか」

「そうですよ
藤十郎に兄上がお帰りになると言ったら
喜んで、なかなか寝てくれなくて大変でした」

「そうですか
しばらく会ってなかったから、大きくなったんだろうな
抱えられるかな?」

「もう、抱える歳じゃない!
甘やかすな!!」

「そうでしたね?八つでしたか?」

「そうだ」

「なるべく甘やかさないでね」

「気をつけます」


「さぁ 休みましょう
体に障るわ」

「そうだぞ
誠十郎、これからは、隠し立てせず
辛かろうが、なんでも言ってくれよ?」

「ありがとうございます」






誠十郎が人知れず、実家に戻って



ひとつき



君菊がこの世を去ったと

噂が広まった



これも誠十郎が頼んだことだった



これで、諦めてくれたはず




誠十郎が藤十郎と仕事部屋に籠もっていた時のこと




「君菊が亡くなったって噂……
聞いて……その……」


土方が、店に飛び込んで来た


「土方君、誠十郎の事は忘れて君も嫁を貰うと良い」


「貴方の幸せが、あの子の供養になるわ」




両親にそう言ってくれと頼んでいた




土方が帰った後





「父上ーー!!母上ーー!!
兄上が!!」



藤十郎が、慌てて走ってきた



すぐに仕事部屋に行くと


胸元を抑え、息を乱し、真っ青な誠十郎が
壁に凭れていた


「すぐに…落ち着くから……」

心配させまいと、微笑む



誠十郎は、余命を宣告されていた



誠を産んですぐに、母子共に危険な状態になった


二人が助かったのも

今、誠十郎が日常生活を自分でこなせるのも

奇跡だった



「兄上、大丈夫?」

「藤十郎が父上と母上をすぐに呼んでくれたから、もう大丈夫だ
ありがとうな」

ずいぶん大きくなった藤十郎を

抱えた

「もう!甘やかさないでってば」

母が言うと父は

「無理するな、少し休め」

「今、動けるうちに無理しないと
もうすぐ、終わりますから」


誠十郎を心配するが、楽しそうな

生き生きした昔の誠十郎を見ると


「好きにしろ」

「やりたいようにやりなさい」


応援してしまうのだった