島原にて


「初めてじゃないんだな…」

「馴れてるねぇ」

「とてもお綺麗です!!」


「おおきに」


ちゃんと声色まで、お淑やかな女の声


目が合うと、なぜか皆、顔を赤らめる


「なんどす?」


「/////何でもねぇよ!!!」


とりわけ、土方が一番赤い


「誠十郎さん!
土方さんの好みなんですよ!」

「ごら!!総司!変なこと吹き込むな!」

「君菊どすえ?
気をつけて下さいね」


浪士組にお酌をして回った後
踊りの支度で、部屋を出た


「あれで、にっこりされたらやばいなぁ」

「だなぁ~男にしとくにゃもったいないな!!」

「女に不自由しない、土方さんが骨抜きだもんな!」

「るせぇ!!!酒のせいだ!!」


踊りの間、男達の視線は、君菊こと誠十郎に注がれていた


踊りが終わり、誠十郎がお酌に回る

すると、酔っぱらいが

誠十郎を襲おうとした


「やめてもらおうか?これは、儂のだ」


芹沢が、誠十郎を懐に抱え、男を睨む


「チッ 邪魔すんな!!」

男が刀を抜いた

誠十郎が、芹沢にしがみつく

「君菊、案ずるな」


向かってこようとした男は、土方によって

沈められた


「大丈夫か?君菊?」


土方にも誠十郎の異変がわかった

座り込み

真っ青になり、芹沢の着物にしがみつき

ガタガタ震えていた


「君菊さん?大丈夫ですか?」

沖田が優しく声をかけると


「…はい」


弱々しい返事


「店主!!部屋を用意しろ!!
君菊を休ませる!!」


軽々と誠十郎を抱えて、芹沢が連れて行った



「どうしたのでしょう」

「例え動きにくくても、あいつなら
立ち向かいそうなのにな…」



この騒ぎの後は、いつもの華やかさに戻り

島原の舞踊会は、無事に終わった




翌日




「すみません…昨日、足を挫いたみたいで… 二、三日休ませます」



誠十郎の父親が知らせに来た



「誠十郎は、大丈夫そうですか?」

「え?ええ、階段から足を滑らせて
あの程度の怪我で良かったですよ」



階段から落ちたことになったのかと

土方が困りながら


「お大事に…」


と言うしかなかった