「…へ?」
思わずでた間抜けな声。周りはざわざわとうるさい。
その喧騒を消すように、顧問が話を続ける。
「静かに。選んだ理由は、人一倍の努力が現れていたからだ。
確かに、2年生だけのユニットで、劣る点もある。」
「…なんで」
口を開いたのは部長だった。
「なんで『明日の空』なんですか!努力なんて、みんなしてます!劣るところがあるのに…
なんでですか!」
もう八つ当たりと言ってもいいだろう。
鋭い目つきで睨む部長に、先生が呆れながらも答えた。
「じゃあ、2週間前から今日まで何回楽器に触った?」
「それは…!」
「見てたら、他のユニットは練習もせずに喋ってたりしたな?楽器なんて1日に1回、それも数分しか触ってない。
3年だからって、そんなやつを情けで出させるほど俺は甘くない。
だったら2年で技術こそ劣るが、努力を怠らなかった『明日の空』を選ぶ。」
「…!」
誰も言葉が出なかった。
正論なのだ。あたりまえだろう。
「…それじゃあ今から『明日の空』にはフェスのことで話がある。一緒に準備室まで来てくれ。」
「…は、はい!」
先生に続いて3人が部屋から出て行く。
「調子のんなよ…」
「覚えてろよ『明日の空』」
次々と微かな声で吐かれる罵倒。
それをただ1人、
レノだけは聞き逃さなかった。

