ミルキーキャンディ

30万なんて、あったら億万長者級である。そんな金ならば、それなりのことをしなければならないのか。例えば、万引き、とか、そんなの愛と付き合ってからしてない。なんて考えながら、足を急いだ。
その頃何が起こってるか知るよしもない。


叶多ぁ、、、たすけ、、、て、、、
大好き、、よ、、、叶多、、、


結局俺は騙されていた。

気付いたらしっかり手足がロープで縛られ身動きが取れない。

「おいてめぇら何の真似を…」
「おまえが来たんだろ?」
組長的な煙草吸った4、50くらいの男が言った。
「俺はダチに報酬があるからって…」
「てめぇの父ちゃん何をしたか知ってか?」
「、、、は?」
「逃げたんだ」
一瞬何を言うかと思った。
「多額の借金をしてな」
あの、強い親父が、、、
逃げただと?
「俺らを裏切った。そして怒りに震えた俺らは…」
「殺した」
つばを飲み込む
「しかしそいつは死ぬ前にこう言った」

俺はいいから、どう叶多は助けてやってくれ

「初めてそいつが俺に土下座をしたからその願い、受け入れてあげたが、もちろん条件付きだ。」

息子か、息子の大切な人、どっちを選ぶか?

叶多を助けてやってくれ

「即答しやがった。」
「それで、、、俺は殴り殺してやった」
男はふぅーっと白い息を吐く。
「おまえは有望な野郎だ。」
そう言って男はあるネックレスを出す。
まさか、、、
「お前の父親の決断通り、連れ子を殺ってやったぜ」
視界が真っ暗になる
一体、今、なにがおきている?
男はハッハッハと高笑いをした。
「ワルでも反抗できないか!ショックか!恨むなら父親を恨みな。」
固まる叶多に近づき男は言った。
「最期、彼女はなんて言ったと思う?」

叶多、今回は許してあげる、、、大好き、、、

「苦しみながら愛の告白までしたぜ。」
彼女は苦しかっただろう。自分を恨んでもいいはずなのに。
あのケンカを二度とできない。かーなたっという声も二度と聞けない。彼女の最期にまで俺はそばにいなかった。
なんて情けないんだろう。
俺のせいだ、と思う半分、それを認めたくない叶多は、同時に叶多は怒りが込み上げてきた。
「てんめぇぇぇ、、、!!!」
それからはもう覚えていない。
恐らく、殴りあっていただろう。しかし、気がついたら病院の一室にいて、妹が椅子でスマホをいじっていた。
「あ、起きた」
いつも叶多は不在なので、叶多とは正反対な性格な、3つ下の妹とちゃんと会ったのは久しぶりである。
その妹の話によると、騒ぎに気づいた通行人が通報したらしく、組長らは逮捕されたらしいが、父親の遺体は見つかったものの、愛はいまだに見つからないという。
まだ現実だと受け入れられない。
「父さんの葬式いってよね」
妹はぶっきらぼうに言う。
「あんたが行かないとあたしが喪主やんなきゃだから」
「いかねえ」
「は?」
「いかねえっつってんだろ!!!」
叶多は涙交じりに叫んだ。
その気勢をみた妹は少し引きぎみに
「わ、わかったわよ」
と病室を出ていった。
はぁ、とため息をつく。
大切な人がいなくなるというのはこんなにもあっけないのか
知られた時は怒りでいっぱいだったが、涙が溢れてくる感じではなかった。
しかしものすごく虚しい
自分への後悔が後から後から募っていく。
どーせ、自分なんか
大切な人も、自分も、守れない
じゃあいっそ、つくらなきゃいい
本気の友達も、大切な彼女も、"愛"を見つけるまで
いらない
そう決意すると急に虚しくなって、涙が溢れてきた。
「っ、、、愛、、、父さん、、、」

叶多は息を押し殺して、泣いた。
記憶に残る中での人生で、初めて泣いた。
しかしその目は、ギラギラ光っていた。
まるで心の隅で眠っていた獅子が、目を覚ましたかのように、、、