午後から、隣の家に住むお姉さんがやってきた。
院長が実加の部屋に案内をする。
「実加ちゃん、この人が隣の家のお姉さん。名前はかよこさんだよ。」
実加は午前中と同じ部屋の隅に腰を下ろして、体操座りでうずくまっている。
かよこさんは少し驚きながらも近づく。
「こんにちは、実加ちゃん。これから買い物に行くから、実加ちゃんも着いてきて。」
サバサバとした性格のかよこさんは、要件だけ伝える。
あらかじめ実加を傷つけるような言動をしないようにと院長に念を押されていた。
余計なことを喋らないようにと、かよこさんは何を言おうと考えたけど、いい言葉が見つからず、要件だけを伝えた。
実加はかよこさんを見ることなく、ゆっくりと黙って近づき、かよこさんの後ろについて、部屋を出ていった。
家の外には、かよこさんの車が止まっていた。
院長に見送られ、かよこさんの車に乗り込み、院長に渡された必要なものが書かれたメモと、クレジットカードを持って、かよこさんと実加は出発した。
この子、本当に人を引き寄せないオーラが半端ないな。
大丈夫かな。どんな生き方をしてきたら、こんな子供ができるんだろう。
助手席に座っている実加を、チラチラと見るかよこさん。
言いたいことはズバズバという性格のかよこさんには、実加のように何を思っているのかわからず、言いたいことも言わない様子に、じれったさを感じているようだ。
それから、大型ショッピングモールで院長に渡されたメモに従って、実加の服や必要なものを購入した。
実加はしゃべりはしないものの、かよこさんに何か聞かれては頷くか、左右に頭を振るかのどちらかを選ぶ。
全て購入して、三時間が経った頃、まだ終わらないかと院長から電話がかよこさんにかかってきた。
院長からは、実加の体調に十分に注意してほしいと言われ、すぐに帰ることにした。
実加は、帰りの車の中で、かよこさんに買ってもらったジュースを飲みながら、窓の外、遠くを眺めていた。
ジュースを買ってもらうなんて、実加には生まれて初めてのこと。
ジュースを飲むことすら、もしかしたら初めてなのかもしれない。



