実加は薬のせいもあって、ぐっすり寝ている。
そのそばで、斉藤先生が実加の手を取り、寝顔を眺めている。
「何をそんなに悩んでたんだ?
一人じゃないんだぞ。俺をもっと頼れよ.......。」
「愛くるしい」ってこういうことを言うのか。
こんなにも人を愛しいと想ったことはない。
家族なんて、いなかったし、親しい関係なんて、院長しかいなくった。
それなのに、突然現れた妹が、こんなにも愛しいと想うなんて、俺は本当に寂しい人生を歩んで来たんだな。
それもきっと、お前だってそうだよな。
これからは俺がいるんだから、俺を頼れよ。
斉藤先生は、実加の額にかかった髪をよけて、頭を撫でながら話しかける。
実加はすっかり安心仕切った顔で寝ている。



