「ゲホッゲホッゲホッ!!!」
大きく咳込み、布団を頭から被って、ベッドで寝ているのは院長。
はぁ、クリニックを休んで二日。
情けないのぉ。
ギィ
ん?誰だ?
院長は不思議に思い、音のする方を見ると、部屋の扉がゆっくり開いた。
「み、実加ちゃん!?」
院長は驚き、体を起こす。
そこには病院服ではなく、私服を着た実加の姿。
「ゲホッゲホッゲホッゲホッゲホッ!」
苦しそうに咳込む院長のそばに急いで実加が近づく。
「どうしたんじゃ?ゲホッ!」
驚きを隠せずにいるが、優しい口調で尋ねる。
実加は下を向いたまま。
「来ちゃった・・・・・・。」
「どうやって?まさか!?
一人?」
実加は頷く。
「どうして来たんじゃ?」
「・・・・・・院長が・・・寝込んでるって・・・・・・斉藤先生が・・・」
院長は実加の言葉に嬉しくって頬が上下がするが、すぐに気を取り直した。
「それはありがとうな。嬉しいぞ。
だけど、わしの風邪がうつったら大変じゃ。
な、すぐに病院に戻ろう。」
実加は下を向き黙った。
静かな時間が流れる。
「ごめんくださーい。
お客さーん、お勘定はーー?」
その声に忘れてた!とい顔の実加。
するとすぐに、実加の前に黒色財布が現れた。
「そうか、タクシーを使って来たんじゃな。
これで、支払いしてきなさい。」
実加は黙って頷き、玄関にいるタクシー運転手に支払いを済ませた。