翌日、すっかり実加の熱は引いていた。
昨日と同じ実加の担当看護師である三池りさが、実加の熱をはかり終えていた。
「もうすぐ先生が来るからね。
胸元のボタンを開けて待ってようね。」
その言葉に警戒しつつも、三池りさが優しくボタンを外すと、実加はすっかり大人しくなる。
少し心を開き始めたようだ。
「昨日はベッドで眠れた?」
問い掛けに小さく頷く実加。
その様子にりさが微笑む。
ガラッ
扉が開くと、青木先生が入ってくる。
「おはよう。調子はどうかな?」
青木先生が登場すると同時に俯く実加。
それを覗き込む青木先生に、さらに俯く。
見かねてりさが
「熱は36度2分でした。血圧も正常です。」
青木先生がりさの顔を見て微笑む。
「分かりました。
そしたら、実加ちゃん、胸の音を聞くからね。」
青木先生が聴診器を手にした瞬間、実加は胸を隠すように布団で覆った。
「実加ちゃん、頑張ろうか?」
青木先生の問い掛けに顔を上げずにいる実加。
するとりさが実加の手を優しく包み込むように触る。
「胸の音はね、心臓が正常に動いているかどうかを聞いたり、肺の音が綺麗かどうか聞くためなんだよ。
大丈夫。少し最初は冷たいけど、静かにしていたら、先生がすぐ終わらせてくれるからっ。」
実加はその言葉を聞いて、りさを見る。
りさはしっかり頷いた後、青木先生を見る。
「うん、実加ちゃん、三池さんの言うとおり。
こうやって、手で温めれば、冷たいのも少し和らぐよ。」
聴診器を手で温めてから、実加の胸へと聴診器を近づける青木先生。
実加は不安な顔をしながらも、布団を下ろす。
りさが実加の胸元を開けると、青木先生がゆっくり聴診器を胸に当てた。
実加は目をつむってじっと聴診が終わるのを待つ。
「はい、終わったよー!
すっかり風邪は良くなったね。
だけど、今日は一度喘息の検査をするからね。」
言いながら聴診器を首にかけ、実加を見る青木先生。
実加は聴診が終わり、ホッと息をつく。
そこまで怖くなかったのか、緊張した表情が緩んでいた。



