ドクター


ナースステーションに戻った看護師が、すぐに同僚に話す。




「さっきね、実加ちゃんの体を拭いてたら、実加ちゃんが、小さな声だけど、『ありがとうございます』って!!
私、嬉しくって、涙が出そうだったわ。」




「へぇ、ちゃんとお礼が言える子なのねぇ。
昨夜も今朝も、ベッドで寝ることもできないで、私たちを困らせてたのに。
本当はいい子なのね、きっと。」




他の看護師も驚いて、その話を聞いている。




ちょうどナースステーションに入ってきた青木先生と斉藤先生も、その話を耳にした。




「皆さん、すいません。実加が昨夜からご迷惑をおかけしているようで。」




斉藤先生の登場に看護師たちは驚く。




「いいんです。




実加は孤児院で育ったので、ベッドで一人で寝ることも怖がるんです。
慣れればきっと、ベッドで寝られるようになります。






まだ、人を信用できないようで。」




その言葉に、一人の看護師が訪ねた。




「あ、あのっ!




斉藤先生と実加ちゃんはどんな関係なんでしょうか……?」




隣にいた看護師が、やめなさいよと言わんばかりに、質問した看護師を肘でつつく。



「いいんですよ。ちゃんと説明しないと。




僕自身、孤児院で育ちました。
実加はもしかしたら僕の兄妹ではないかということで、前にいたクリニックの院長が、実加を引き取ることにしたんです。



今はまだ、あのような状態なので、本当に兄妹なのかはわかりません。
ですが、どうあれ、他の患者とも同等に対応してください。僕もそうしますので。」



というと、その話を聞いていた看護師たちは納得したような、そうでないような顔をした。




「さぁ、その話はやめて、引き継ぎをしましょう。」




そこにいた、看護師長がみんなに声をかけると、すぐに全員が仕事モードになり始めた。