ドクター


実加が目を覚ました頃、辺りは日が沈みかけ、部屋の中が夕日で赤く染まっていた。
ちょうど、窓のカーテンを締めに来た看護師が部屋に入ってきたところで、実加は眩しそうに目を開けている。





「実加ちゃん、起きたのね。
お熱測ろうね。」




実加のパジャマをめくろうとするが、実加は朝方とは違って意識がはっきりしているからか、看護師の手を払い除けた。
それでも強引に看護師は実加の体温を測ろうとする。




「ゃめてっ!」




小さくて震える声で叫んだ。
看護師は困った顔で実加を見ている。




「お熱がまだあったらいけないから、測らせてくれないかな。
服も替えないと、またお熱が上がっちゃうのよ。」




実加のパジャマは汗でビタビタになっていた。
実加は自分のパジャマが濡れているのが気になったのか、看護師の言葉を聞くと、大人しくなり、再びパジャマをめくろうとする看護師に抵抗せずにいた。



「お熱は下がってるね。次は、パジャマを替えましょうね。」




看護師が持ってきたパジャマを実加に渡すと、実加は素直に服を脱いだ。
看護師は実加の背中を温かいお湯をつけて絞ったタオルで、背中をしっかりと拭いた。
実加はさっぱりして満足したのか、表情に緊張感が抜けてきた。




「……あ、ありがとう……ございます。」



小さい声で、実加は看護師にお礼をいう。
その言葉に看護師は驚き、涙目になりながら、



「と、とんでもないわよ……。
今はお風呂に入れないけど、完全に熱が下がって体調が戻ったら、お風呂にも入りましょうね。」




看護師はそう言うと、嬉しそうな顔で、部屋をあとにした。