数日後、孤児院から院長に連れられて、彼女がやってきた。
顔は日に焼けて、髪はとかれた様子もなく、ボサボサのまま。
どうしたら子供なのに、こんな目つきになるのか。
その上、瞳は何かに怯えているようにも見える。誰からも愛情というものを受けていないことがよくわかる。




名前は加藤実加(かとうみか)18歳。
身長は165センチと女性にしては高いが、体重は45キロと軽い。腕も脚もか細い。どうしたらこんな体になるのか、孤児院での生活が彼女によく現れている。



確かに苗字は俺の旧姓。身長は185センチの俺と一緒で高い。
孤児院での生活は、きっと俺が受けてきたとおり、虐待の数々だったんだろう。
けど、これからどうしろって言うんだ。
俺が彼女の目が少し白濁しているから、ジッと見ていると、彼女はキッと俺を睨んだあと、うつむいた。きっと見つめられるのが怖いのだろう。




孤児院からやってきてすぐに病院での検査となると、嫌がるだろうと院長が考え、ひとまず院長と斉藤先生の暮らす自宅へ案内した。
と言っても、クリニックに併設されている自宅なので、隣はすぐにクリニックとなる。
実加は院長の後ろから少し離れて歩く。
斎藤先生が後ろを着いて行くが、何度も何度も後ろを振り返っては斉藤先生の足元を見ている。




「そんなに俺が気になるか。」




斉藤先生が尋ねるが、もちろん答えは帰ってこない。




けっ、可愛くないな。年頃の娘はこんなもんか。




斉藤先生は、院長に実加の出迎えはしたくないと申し出たが、院長は最初から一緒にいないと実加が怖がると考え、一緒に出迎えるように頼んだ。
だからか、面倒くさそうに院長と実加の後ろを歩いている。