実加はベッドに座っていたが、すぐに落ち着かない様子でベッドから降りた。
部屋の奥隅に腰掛けると落ち着くのか、次第にウトウトし始めた。
部屋に一人、慣れない環境で実加は寝られないのだろう。
どれくらい経ったのか、部屋の扉が開き、看護師が巡回に来た。
懐中電灯の光を天井に向けると部屋が明るくなった。
ベッドを見ても実加はいない。
看護師はさらに部屋に入ると、ベッドの奥隅にいる実加に気づいた。
「え?実加ちゃん?」
看護師が体操座りの実加に近づく。
実加は少し頭を上げるが、すぐに顔を埋めた。
看護師は実加の腕を両手で摩り、
「実加ちゃんっ、体も冷えちゃったし、ベッドに戻ろうか?」
実加は全く動こうとしない。
看護師は実加の脇に手を入れて、実加を持ち上げようとする。
しかし実加は全身に力を入れて、動こうとしない。
終いには看護師を両手で突き飛ばしてしまった。
「いたた・・・。」
当直中の巡回に、なかなか戻って来ないから心配したのか、もう一人看護師が部屋に入ってきた。
部屋の電気を付けるとすぐに、床にしりもちをついている看護師を見つけ駆け寄った。
後に来た看護師は、すぐに携帯電話で当直の医師を呼んでいる。
それから実加にベッドに戻るように声をかけるが、実加は一向に動こうとしない。



