実加は真っ白なシーツの上に仰向けで寝かされ、口にはマスク、腕には点滴をした状態で目を覚ました。
「ん、んん・・・・」
どこにいるのか、なぜこんなところにいるのか、実加はわかっていない様子だった。
点滴をしていない右手を口にやると、マスクを外し始めた。
カタッ
マスクを床に落とす。
その音を聞き、実加のベッドに寄ってきた看護師が、実加の目が覚めたことに気づくと、実加に声をかけた。
「実加ちゃーん。わかる?」
少し大きめの声でかける。
実加は伏し目がちではあるけど、目を開いている。
看護師と目を合わせないようにしているようだ。
「先生呼ぶからね、待っててね。」
看護師が持っていた携帯電話で医師を呼ぶ。
携帯電話をしまうと、床に落ちていたマスクを消毒して、再び実加の口につけようとする。
パシッ
実加はマスクを叩き落とした。
「実加ちゃん、頑張ろうね。」
再び看護師が実加の口にマスクを当てるが、実加は顔を振って嫌がっている。
そして、体を起こしたところで、看護師が体を押さえようとするにも関わらず、ベッドから降りると同時に、腕に刺さっていた点滴を勢いよく引っ張り、扉に向かった。
ガラッ
ちょうどその時、目の前に白衣を着た背の高い男性が実加に立ち塞がっていた。
実加はその男性を振り切ろうとするが、実加の行く方に立ちはだかるため、前へ進めない。
その後ろには、斎藤先生と院長が立っていた。



