ドクター


私は近くにあったトイレに駆け込んだ。






「ハァハァハァ・・・・・・。」






どうしよう。トイレに来たけど、咳は治まりそうにない。







トントン







「大丈夫ですかっ?」 






外から女性の声が聞こえる。






ん?聞いたことある。






ガチャッ







私はやっとの思いで手を伸ばし、鍵を開けて。







りささんっ!!!






「実加ちゃん、大丈夫?」






「ゲホッゲホゲホゲホ!!!」





りささんはトイレの中のナースコールを押した。






「実加ちゃん、ゆっくり息を吐こう。フーーー






吸引器は?」







あ、持って来てない。







「持ってないのね。」







「ヒューヒューヒュ-。ゲホゲホゲホ!!!ゲホゲホゲホ!!!」







「大丈夫、すぐに先生来るからね。」







りささんは、私の背中をゆっくり大きく撫でてくれる。



 


温かい手。






「りっゴホッ、さ、さんっ!!!」






私はりささんに抱き着いて、泣いた。







「えっく、ゲボッえっ、ゲボッゲホゲホゲホっ!!!」







「実加ちゃん、大丈夫だからね。泣いたら余計に苦しくなっちゃうからね。」






りささんの声を聞いて、さらに涙が出てきた。
自分でも自分じゃないくらい、寂しさがどっと込み上げてきた。
なんだか、糸が切れたみたい。