朝がやってきた。
実加が目を覚ました。
腕には点滴がされている。実加は驚いて思わず点滴を引っ張った。
痛みよりもブチッという音に驚く実加。
腕を見ると点滴をしていたところから、タラッと血が滴り落ちた。
慌てて枕元のティッシュを引っ張って腕に押し当てた。
点滴はもう少しでなくなりそうだった。
実加はベッドの上が慣れない。
すぐにベッドから降りたが、体がまだ回復していないので、フラフラする。
それでも部屋の片隅に行き、腰を下ろした。
そこが一番落ち着くのだろう。
体操座りになって、顔を膝にうずめてうつむいた。
少しして、部屋のドアが開き、院長が入ってきた。
院長はまたも部屋の片隅にいた実加を見て、驚いた顔をする。
しかし声には出さず、ゆっくり実加に近づく。
「実加ちゃん、ここがいいのかな?」
実加は黙ったままうつむいた。
「まだ完全に発作が落ち着いた訳じゃないから、ベッドに戻ろう。」
と優しく院長がいう。
しかし実加は動こうとしない。
床のどこか一点を見つめる。
「実加ちゃん・・・」
と院長が声をかけた後、部屋に斉藤先生が入ってきた。
院長が斉藤先生の方を向く。
斉藤先生は院長と実加に近づき、実加の前で腰をかがめて実加に顔を近づける。
「ベッドに行くぞ。」
斉藤先生が実加を抱えると、実加は全身を使って抵抗する。斉藤先生は力で実加を押さえて、腕を掴んだ。
腕からはティッシュでは押さえきれていない血が流れてきた。
点滴を無理に引っ張ったので、点滴をして開いた穴が広がって傷になっていた。
斉藤先生が実加を抱えている間に、院長が持ってきた救急セットから消毒と綿を取りだし、ピンセットで傷口を消毒する。
実加が痛みで手を引っ張ったが、斉藤先生に力強く掴まれているので動かない。
「んーーーーーー!
ぃやあ!」
実加は目一杯動いてる。発作で体はボロボロなのに、どこからそんな力が出るのか。
斉藤先生はそんな実加をベッドに下ろすと、実加は布団に包まって背を向けてしまった。
傷の治療は終わったので、斉藤先生は散らばった点滴を片付ける。
院長は斉藤先生に部屋を出るように目配せする。
二人は実加を部屋に残して廊下へ出た。



