婚約者として育ちゃんと会う日が来た。

顔合わせを済ませて少ししてから二人だけになった。

「育ちゃん、じゃなくて育太さん…?」

「優ちゃんが呼び方変えるなら俺も変えるか。優花さん、突然婚約ってなって、混乱してない?」

わたしは小さくうなずいた。

「してる。わたしにとって育太さんは幼馴染みだから」

そう言うと育太さんは少し残念そうな表情をした。

何故なんだろう。

「なんで、悲しそうなの?」

思わず聞くと、育太さんは首をふって笑ってみせた。

けど、作り笑いだ、長い付き合いだから分かる。

「そう見える?気のせいだよ。
…あ、そうだ、とりあえずは婚約者じゃなくて候補ってことにしてもらうか?
その方が戸惑いもすくなくなるだろう?」

さっきの表情はまだ気になっていたけど、言いたくないみたいだし、聞くのは諦めるしかないかな。

今は育太さんの提案をありがたくうけよう。

正式に婚約するまでに彼への片想いを諦められるだろうから。