『…そっか。じゃあ、ココで。』

「はい。」

『本当に、大丈夫?』


運転席に目を向ければ、本当に心配そうに見つめる杉原さんと目が合う。

きっと、曲がり角の先の道路が薄暗いのを見て、私の身の安全を心配してくれているんだろう。

出会った時から変わらない、杉原さんの無条件の優しさに、私は勘違いをしてしまいそうになる瞬間がある。

その先に待ってるモノが怖くて…――私はすぐにその想いに蓋をしてしまう。


「…大丈夫です。…それより、今日は本当にありがとうございます。今夜も奢っていただいて」


食事を終え、レストランを出るときには、心底驚いたことを思い出した。

杉原さんが、私がお手洗いに立っていた隙に、会計を済ませてくれていたのだ。

それを知らなかった私は当然、レジを素通りしてレストランを出ていく杉原さんと、それを優雅に礼儀正しく見送るスタッフさんに驚き、戸惑いを隠せなかったことは言うまでもない。

アタフタしていた私に、杉原さんが裏でのボーイさんとのやり取りを教えてもらい、何度感謝の言葉を述べたものかわかったものじゃない。


今夜、杉原さんに連れて行ってもらったレストランの料理はどれも、本当に言葉にできないくらい美味しかったから。

車を降りる前にも、もう一度、杉原さんにお礼を言わずにはいられなかった。