――みのり Side――


杉原さんと初めてご飯を食べた後、私は家までの送迎まで杉原さんに甘えてしまった。

杉原さんの車に乗って数十分、お腹も満たされて、心地良い車の振動によってうつらうつらとしていた私が気付いた頃には、私の家の近くまで来ていた。


「あっ…杉原さん、ココでいいです。」


家に最も近い四つ角で、運転している杉原さんにそう告げる。

ここを曲がれば、すぐそこに私の家だ。

……というか、私が乗っている助手席側の道路に沿って立っている縁(へり)を超えれば、私の家がある。

つまり、私の家はもう隣にあるのだ。

だけど、家の正面玄関はここの曲がり角を通らないといけないため、杉原さんには隣にある大きな一軒家が私の実家なんて、私が言わないかぎり気付かないだろう。


『そう?でも、どうせだから家の前まで送ってくけど』

「いえ…この先曲がったら行き止まりですし、引き返すのも難しいですし、ココで、大丈夫ですよ。」


杉原さんを気遣いながら、心のどこかで、あの一軒家が私の実家だと、杉原さんに知られまいとしている自分がいた。

私が実家で一人暮らしをしている理由を彼に言うのは…まだ、彼にとって重い話だろうから。

それに、杉原さんとは…もっと明るい話をして、楽しい時間を過ごしていたいと、楽しかった今夜の食事を思い出して思った。