王道恋愛はじめませんか?




「さっき、みのりさんの携帯、鳴ってたよ。」

『えっ、本当ですか?』


彼女と目が合った瞬間、さっきのことを伝えれば、みのりさんは席に座らずに自身の通勤カバンからスマートフォンを取り出した。

通知をチェックしている彼女を遠くから眺めていれば、ふと彼女のスマートフォンの真下で揺れているストラップに目が行く。

あれって、確か――…

記憶をたどると思い出すのは、先日の喫茶店で彼女から見せてもらったアクセサリー本。

あの時、俺が何気なく言った言葉を真摯に受け取ってくれていたのか、彼女のスマートフォンにつけられているストラップは、おそらく彼女が作ったのだろう、あの本に載っていたビーズで作られたウサギのアクセサリーだった。


「……何か急用だった?」

『いえ…友人からのメールでした。』


そう言って、スマートフォンを手にしたまま目の前に座った彼女に、さぞ今気づいたかのようにストラップの話題に触れる俺。


「あ…ねぇ、そのストラップって――」

『あっ…!』


俺の言いたいことに気づいたのか、彼女はほのかに頬を赤く染めて見せる。

彼女の反応がいちいち可愛くて、甘く見えてしまうのは、俺がもう彼女の虜になりつつあるのか――…