「……はい」
『ん。じゃあ早速、何食べたい?』
少しだけ心を落ち着かせることができた私を察した杉原さんは、慣れた手つきでどこから取ってきたのか分からないメニュー表を私の前に差し出した。
「えっと…――」
杉原さんからメニュー表を受け取って、それに目を通したその時、私は固まってしまった。
値段が、書かれてない…?
今まで見たことのないそれに、私はまた戸惑ってしまう。
『…どうかした?』
明らかに動きを止めた私を見ていた杉原さんは、?マークを浮かべながら私の顔を覗き込んでくる。
違う意味でドキリとしてしまう私の鼓動を抑えて、小さく口を開いた。
「あの…値段が、書かれてないんですけど…?」
『ああ、うん。ここは俺が持つから、気にせず頼んでいいよ?』
「で、でも……」
平然と、ここでの支払いも自分が持つと言った杉原さんに、私は申し訳ないという気持ちが募る。
……だって、ついこの前も喫茶店でのお代も、杉原さんに持ってもらったばかりなのに…。
初対面じゃないとは言えど、恋人でも友人でもない杉原さんにこれ以上奢らせてしまうのは、あまりにも酷い話だと思う。

