『――杉原です。今夜7時、××で会えますか?』
(っ……)
開いたばかりのメールの内容に、私は息を詰まらせてしまう。
私……本当に杉原さんと連絡先交換しちゃったんだ…。
数時間前、杉原さんと会議室で話したとき、私は自分のスマホを総務部に置いたままだった自身のカバンに入れていてその場に持ち合わせていなかったために、とりあえず私の連絡先を書いた名刺を杉原さんに渡しただけだったので、こうやって杉原さんからメールが来るまでは、杉原さんと連絡先を交換したという実感が全くなかった私。
あれは決して夢なんかじゃなかったんだと、ただ茫然と杉原さんから送られてきたメールを見つめていると、
『――みのり先輩~!このあと、飲みに行きましょう~』
「っ!」
すでに帰りの支度を済ませた城田ちゃんが、私の背後に立ち、にこやかな笑顔を浮かべていた。
気を抜けているところに、突然声を掛けられた私は、思わずビクッと肩を飛び跳ねてしまい、スマホを胸に当てて後ろを振り返った。
『わっ…すみません、そんなにビックリされるとは思ってなくて、』
振り返った先にいた城田ちゃんは、あまりに異様な驚き方をした私の反応に驚いたらしく、元々大きな瞳をより一層大きくさせ、申し訳なさそうに口を開く。
「う、ううん。いいの、ちょっとボーっとしてた私も悪いから。」
そう言って苦笑いを溢すと、『いやいや。あっ、飲みに行きましょうよ!』といつもの調子に戻った城田ちゃんを見て、杉原さんのメールを見られたわけじゃないと察した私は内心ホッとする。

