王道恋愛はじめませんか?




――みのり Side――


その日の夕方。

なんとか定時までにマストの業務をやり終えた私は、数時間ぶりに帰ってきた総務部でホッと一息ついていた。


あー、疲れた…

ふう、と長めのため息が漏れる。

ずっと立ちっぱなしで、ろくに休憩も取れていなかったためか、自分のデスクに座って飲むコーヒーがいつもより幾分美味しく感じられた。


ヴヴヴッ…ヴヴヴッ


ぼうっとコーヒーを嗜んでいると、自分のカバンに入れたままとなっていたスマートフォンが震えた。

こんな時間に、いったい誰だろう?と、飲みかけのコーヒーカップをデスクに置いた私は、振動を止めたスマホの画面を見て目を見張った。

メール受信あり、差出人:×××××@nomoco.ne.jp

差出人欄に人名が表示されないところから、差出人は連絡先に登録していない人。

普段だったら、差出人不明のメールが来ても、そこまで驚かない私だけど――、今日にいたっては違う。


差出人不明の誰かから、連絡が来る心当たりがあるのだ。


高鳴る鼓動を抑えて、私はスマホのロックを解除して、メール受信のアイコンをタップした。