数秒間、沈黙の空気が流れる。

私は置いといて、警備員さんはどうすべきなのか、悩んでいる様子だった。


『で、ですが、それだと、他のスタッフに支障が――、まだ会場の後片付けも終わっておりませんし、』

『それなら、まだ始まるまで時間があるでしょ?それまでに見つからなかったら諦めて出ていくよ。ね?』


え……っ

杉原さんの優しい微笑みで、返事を促される。

こ、これは頷け…ってこと?


「は、はい…!」

『ほら、ね?』

『っ…わ、分かりました…。じゅっ、10分です!それまでに見つからなかったら、大人しく外で待っててくださいよ!』


そう言って、警備員さんはサッと身を引いて所定の位置に戻っていく。


「あ、ありがとうございます…!」


小さくなる後ろ姿に、精一杯のお礼を告げた。