「あ…っ、その、ホールに落し物をしてしまって…」

『…ああ、そういうことかぁ。』


芸能人って、こんなにフレンドリーなのだろうか。

初対面で、しかもスタッフでもなんでもなくて、もしかしたら熱狂的なファンかもしれない私に対して、何の警戒もせずに微笑みかける杉原さんに違和感を覚えた。

思わず芸能人の笑顔に見入っていると、


『――いた!ちょっと君!勝手に入っちゃ困る――っ、杉原さん!?』


私を見つけた警備員は、すぐに杉原さんの存在にも気づき、目が点になっている。

警備員でも、中々彼らを目にする機会はないのだろう。


『…あ、もしかして、君がこの子を追ってた人?』

『っえ、ええ…。落し物が、あるとかで…ですが、そういったものはスタッフが、』


この状況についていけていないのか、私を追っていた時とは比べ物にならないくらい、しどろもどろとした口調で杉原さんに説明する警備員さん。

悪いのは私だ。

警備員さんの言った通り、その場で待っていれば良かったというのに。


『んー。ねぇ、それよりも、本人に探してもらうほうが手っ取り早くない?どこで落としたのかも心当たりあるみたいだしさ、』

「え……」

『でっ、ですが…!』


思いもよらない杉原さんの提案に、私も警備員さんも同じような驚愕の表情を見せる。