泊くんの緊急内線を受けて2分後。

私と城田ちゃんは、14階にある特別応接室のドア前の廊下に立っていた。


事の発端はもちろん、泊くんの電話だった。

その内容は、特別応接室の電灯の一つが切れて、明かりがつかない、ということだった。

泊くんの声の奥で、広報部長の怒鳴り声と、総務の応対担当社員の謝罪の声が聞こえていたから、目の前の扉の先には相当な修羅場が待ち受けていることくらい、容易に想像できる。


『先輩?行かないんですか?』


背後で脚立を持った城田ちゃんは、早くShineに会いたいとムズムズしているらしく、興奮を隠せないみたい。


「…いや、行こう。」


ここは、覚悟を決めるしかない。

広報部長には、あとで謝罪の菓子折りを送っておこう。

そう思い、私は思い切って、特別応接室の扉を開けた。


ガチャッ

「総務部・真山です。蛍光灯の交換に参りました。」


ドアを開けた先、一斉に室内にいた人たちの視線が私達に向く。

室内はシーン、と静まり返っており、何だか不穏な空気が漂っているが、どうやら広報部長の逆燐は一旦は静まったらしい。

それはきっと、この場にShineがいるからだろう。

視界に入れないようにしていたShineの中に、杉原さんの姿をいとも簡単に見つけてしまった私は、一瞬の胸の高鳴りを抑えることはできなかった。