――『おはようございます!みのり先輩!』

「…おはよう、城田ちゃん。」


駅前で未来と別れた後、出勤してエレベーター待ちをしていた私に声をかけてきたのは、後輩の城田 愛実ちゃん。

人懐っこく、素直な反面、鈍感さを持ち合わせている可愛さMaxの後輩だ。


『昨日、先輩がいなかったから大変だったんですよ~!』

「えっ、そうなの?」

『実は――…』

『おはよう!総務のお2人さん♪』


城田ちゃんが口を開くと同時に、横から入ってきた男性の声につられて、2人で顔を向けると、そこには広報部の同期である泊(トマリ)くんがいた。

高身長で左目の泣き袋の下側に小さなほくろが特徴的な爽やか男子だ。


『おはようございます!』

「…おはよう。」


泊くんと挨拶を交わしていると、エレベーターのドアが開き、人の波に乗せられるように3人でエレベーターに乗った。


「で、城田ちゃん、大変なことって?」

『あっ、そうそう!先輩…っよりは、泊さんの方がよく知ってると思うんですけど、』

「?」


私より、泊くんの方がよく知ってること?

ってことは、大変なことっていうのは、広報部絡みってこと?

?マークを浮かべる私の横で、泊くんが、ああ、と小さく声を発した。


『もう総務に話しまわったんだ?』

『はい。もうって言っても、当日まであと1週間ちょいですけどね。』

「え、ちょっと待って。2人して私を置いていかないでよ。」


あ、そうだった、と2人して私に謝る。

終始笑顔の2人を見て、そう大変なことでも、急用でもなかったことを察した私は、内心ほっとしていた。