…あんなに、幸せいっぱいの2人だったのに…。

現実は、少女漫画や恋愛小説のように上手くいくものではないと、分かってはいるけれど、それを目の前にするしないとなると、それはまた別の話で。

誠実そうだった未来の元彼氏への幻滅と、2人の恋が実らなかったことへの虚しさと、いろんなものが混じった私の心は、とても複雑だった。


『……あー、さっぱりした!』


数十分後、シャワーを浴びて戻ってきた未来は、先ほどよりも顔色は幾分良くなっていた。


「ゆっくりしてる暇ないよー。ご飯食べて、髪乾かして。」

『もう、そんなに急かさないでよ~』

「何言ってんの。私は今日、出勤なんだからね。ほら早く、ご飯食べよ。」


肩にぶら下げていたタオルで濡れた髪を拭いている未来をダイニングテーブルの椅子に座らせて、朝食を囲む。


『何時に出る?』

「んー…7時50分かな。」


お互いに私が作ったお粥を啜りつつ、口を開く。


『えー…そこは8時じゃなくて?』

「電車だもん。」

『しゃあないのぉ~!』

「仕方ないでしょ?近いうち、また飲みに行こ?」

『じゃあ、今週の金曜ね!』

「……それ、明日じゃん。」


2人で笑いあいながら、大学時代もこうして夜更けまで飲んで慌ただしい朝を迎えていたことを思い出す。

あの頃のように、毎日顔を合わすことなんてなくなってしまったけれど、会えば何でもないことで笑いあえることが幸せに感じた。