覚えてて、くれたんだ…。
杉原さんのような有名人で、忙しい方なら、私のようなちっぽけな存在なんて、記憶の片隅にも置かれていないだろうと思っていた。
それだけに、杉原さんの問いかけは私の中で大きな衝撃で。
「は、い……。」
その一言さえも、震えてしまう。
『…やっぱり、そうだ。』
深く被ったキャップのツバから零れる杉原さんの微笑みは、一か月前に見たものと全く変わっていなくて、また、私の心臓は、トクンッ…と小さな音を立てる。
『……今日は、休み?』
「えっ…あ、はい…!」
小さな沈黙の後、聞かれた意外すぎる質問に、ほぼ反射的に頷いていしまった。
……うう、これじゃあ、杉原さんに聞かれたかった、みたいじゃない…。
なんだか恥ずかしくなって頬が赤くなるのが分かってしまった私が、下を向いていると、
『俺も今日はオフなんだ。…良かったら、近くのお店でお茶でも、どう?』
「――え?」
何故か杉原さんに、お茶に誘われてしまったのだった。

