「あっ…す、すみません…!」


こういう時、いつも注意力が散漫になってしまう自分が嫌になる。

目線を本棚から、ぶつかった男性に移す。

その人は、ワイン色と紺のボーダー柄のカーディガンにジーンズを履いて、室内にも関わらず黒のキャップを被っていた。


『いえ…』


ゆっくりと、その男性が私の方へと振り向く。


「え……」

『っ……!』


彼の顔を見た瞬間、私は驚きで固まってしまった。

普通の人なら、分からないだろう。

彼は少しだけ角度を変えて、顔を見せないように斜め下を向いていた。

それに対し、私は150センチ前半の低身長だったのが災いとなり、見えてしまったのだ。


数秒、彼と見つめあう。

嘘でしょう…?こんなとこで、

こんなとこで、あの杉原さんに会うなんて――…っ